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vol.1 痴呆関係


老いとの関わりを学びたければ北欧に行くより日本のケアの実践から学べ、
と私は主張してきた。自立した個人を価値あるものとする北欧や西欧と相互
依存文化の日本とでは、老人から求められる関わり方が違っているからだ。
特に、近代的自我 を前提とする北欧の方法論は、
痴呆性老人のケアには






ように思う。

 なぜなら、痴呆とは近代的自我が解体されて
「生き物」という自然に回帰していくことなのだから。

 
「よりあい」にまなぶ痴呆性老人ケア
     
家庭の育児力が低下している、といわれている。親による子への虐待が社会問題化している。しかし、では育児ロボットをつくればいいじゃないか、と言う人は一人もいない。育児の本質は人と人との関係だということをみんな知っているからだ。

 ところが、老人介護についてはどうだろう。介護力が足りないなら、介護ロボットをつくればいい、と平気で言ったりする。介護は介護力の問題だとしか思われていないからだ。そんな考え方こそが「老人問題」を生み出してきたのだと私は考えている。老人問題は、老人世代に私たちの世代がどう関わったらよいのかという関係の問題なのだと私は思う。

 私はかねてから「痴呆ケアを学びたいなら福岡へ行け」と言ってきた。今年10周年を迎えた「宅老所よりあい」と「第2よりあい」の実践から学ぶべきだ、と。「よりあい」は、通って泊まれて住める老人施設である。施設といっても福岡市の住宅街の一角にある借家である。
第2よりあい代表の村瀬孝生さんは、利用者の女性(74歳)をめぐって同僚と張り合っている。そこへ風格のある元副社長の利用者が現れ、三角関係が四角関係に…という小説風のエピソードから始まるのが、村瀬さんが書いた『おしっこの放物線 老いと折り合う居場所づくり』(雲母書房)である。

「私のおなかに、どうも赤ちゃんがおるごたる。 産んでもよかろうか」と、入所者の女性から相談を受けたのは、よりあい代表の下村恵美子さん。 これは下村さんが書いた『九八歳の妊娠』(同)のタイトルになったエピソード。下村さんはまじめな顔で「父親はだれ」とおばあちゃんに問いただすのだ。さて、どうなるか…。

 ここでは痴呆性老人は介護される対象ではなくてエロス的関係の主体であり、客体である。エロスとは男と女が互いを求めることだけではなくて、母と子が、さらには人間と人間が互いのことを求める人間関係の基本である。

 老人ケアはエロス的世界の行為でもあるのだと私は思う。そのことが介護の現場からイキイキと表現される時代が来た。最近出版された2冊の本には日本の老人ケアを変えるヒントがある。                       【12月14日、西日本新聞に掲載】

     
おしっこの放物線
98歳の妊娠
 
おしっこの放物線
- 老いと折り合う居場所づくり -

村瀬孝生 文・絵

定価 1600円+税
判型 四六判・並製 208頁
発行 雲母書房
 

98歳の妊娠
- 宅老所よりあい物語 -

下村恵美子+谷川俊太郎[詩]
定価 1800円+税
判型 四六判・上製 280頁
発行 雲母書房

     
介護基礎学
18坪のパラダイス

介護のバイブル 必読書
 

みさとの実践に学ぶべきこと
がたくさんあります

介護基礎学

竹内孝仁 著

定価 2200円+税
判型 B5判 224頁
発行 医歯薬出版
  18坪のパラダイス
- デイセンターみさと奮闘記 -

田部井康夫 著

定価 1600円+税
判型 四六判変形 168頁
発行 筒井書房
     
痴呆老人からみた世界
 

三好春樹の論考も取り上げています

 
痴呆性老人からみた世界
- 老年期痴呆の精神病理 -

小澤勲 著

定価 3000円+税
判型 四六判・上製 260頁
発行 岩崎学術出版
 

 

     

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