「給料分の仕事」のための知識 by 三好春樹
■--- 『介護職よ、給料分の仕事をしよう』という本が書店やネット通販で売れている。題が刺激的なこともあるのだろう。なかには「これ以上仕事をしろというのか」と怒る人もいるが、もちろんそれは誤解だ。逆に、安月給だから適当に働けばいい、という意味でももちろんない。
私たちに求められていることは、豊かな人間性や高い専門性ではない。それはもっと待遇をよくしてからにしてくれ。今、まず私たちがなすべきこと、できることは、老人をダメにしないことだ。老人が嫌がることはしないということだ。
でもそれは簡単なことではない。
障害をもった人や老人をダメにしないためには、障害や老いについての知識や技術を要求されるからだ。それがこの本で訴えたい真意である。特に、脳卒中片マヒやパーキンソン病という一生つき合っていく障害と病気についてこそ、その知識と技術は不可欠だ。
そこで書いたのが『身体障害学』(雲母書房)なのだが、そのなかから片マヒに関する部分を介護家族にもわかりやすいように、図やイラストを使って書き下したのが本書である。
しかし家族向けということで出版された『新しい介護』が介護職の必読書になったように、介護がここまで大衆化した現在では、むしろこうした本が介護職に読まれるべきものかもしれない。
右片マヒに伴う失語症、左片マヒに伴う失行や失認、さらにどの医学書にも書かれていない性格変化についても、専門用語は使わないでちゃんと説明している。
片マヒ者に対して「闘うリハビリ」などといって一生訓練させるような風潮が蔓延している。私は身体機能の維持のために本人が訓練しようとするのを否定するつもりはない。しかし、それは、こうした片マヒ者へのまわりの理解によって、心身ともに安定して生きていくことができていることが前提になくてはならないのだ。
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